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ロシアへの経済協力は条約締結後にのみ成り立つ

北方領土問題について日ロ外相が5月10日に話し合った。

 https://digital.asahi.com/articles/ASM5B5DKZM5BUTFK014.html

外相会談では、相変わらずロシアは無謀な主張「北方領土は第二次世界大戦の結果ロシア領となった」を繰り返した。近代国家間においては、戦争による戦闘行為が停止された後に正式な平和条約が結ばれてはじめて「戦争の結果が確定した」「戦争が正式に終わった」ことになる。こういうやり方は、西洋世界においては太古からのしきたりであり、古くは紀元前13世紀のエジプト―ヒッタイト間の平和条約に確認することができる。17世紀のウェストファーリア条約や20世紀のヴェルサイユ条約など、有名な大戦後の条約を一度は聞いたことがあるはずだ。ところが、ロシアはそのような「条約を結んで初めて戦争の結果が確定して戦争が正式に終わる」というやり方を日本に対して否定している。第二次世界大戦で日本と戦ったロシア以外の国々は、すでに日本と正式な平和条約を結んでいる。米国や英国などの約50カ国は日本とサンフランシスコ講和条約を結び、戦争状態を正式に終結させている。サンフランシスコ講和条約により日本と講和できなかった国々、例えば中国やポーランドなども、その後に日本と平和条約を結び戦争状態を終結させている。

しかし、ロシアだけはそういうやり方に従わず、条約を結ばずに「戦争は正式に終結・確定している」と主張していることになる。我々東洋人を差別的に扱っているのだろうか。

ロシアの行動は常軌を逸しているが、その主張も滅茶苦茶だ。「国連憲章で解決済み」という旨の主張を繰り返しているが、北方領土について国連憲章が意味をなさないことは既に以下で説明した。

 https://qvahgle-gquagle.blog.so-net.ne.jp/2019-03-05-05
 https://qvahgle-gquagle.blog.so-net.ne.jp/2019-03-13-01

また、歴史認識についてもロシアは「自国民が先に北方領土を見つけた」などと今回も誤った主張をしている。冗談ではない! 歴史的経緯については、日本の方が先に北方領土を発見し自国の活動圏内に組み込んでいた(以下参照)。

 https://qvahgle-gquagle.blog.so-net.ne.jp/2019-03-05-06

歴史的に先に自国の活動圏に組み込みその後にきちんと自国の管理下に置いた土地は、国際法上、その国の物となる。無主地先占の法理である。その場合、国家を作れないレベルの未開民族がいたとしても、国際法上は彼らは無視される。未開民族にとっては可哀相な話であるが、それが、ロシアをはじめとした西欧社会が作りあげた「国際法と国際秩序」だ。このルールによれば、北方領土は、初めに発見し、その後に自国民まで送り込んで各種開発と管理をしっかりと行っていた日本の物であることは疑いようがない。当時は、未開民族の住む未開地は、近代国家が領有をしっかりと行った時点において、いずれの国家によっても領有されたことのない未開地から「領有を行った国の固有の領土」となった。故に、日ロどちらの国が先に領土を発見し管理していたかということは、領土問題における基本も基本の非常に重要な事項だ。

ところが、この点をロシアはないがしろにしている。上記リンク内で説明したように、日本の方がロシアより遥か前に北方領土に住んでいたアイヌたちと交易し、日本の経済活動圏にアイヌたちを組み込んでいる。この時点で日本はアイヌを通して間接的に北方領土の領有を終えていたことになる。その後、アイヌたちが反乱を起こしたりしたが、その原因が不平等な貿易を強要されたために北海道ではとれなかった「米」などが手に入り難くなったことであったことを思い浮かべれば、日本の経済的・政治的活動圏へのアイヌの包摂と道東・北方領土の領有の根拠をもっとはっきりとイメージして確認することができる。つまり、日本はアイヌたちを完全に日本の経済的・政治的活動圏に組み込んでいたからこそ、そこでの不平等な交換基準の強要が反乱を招いたのであり、その事実は道東や北方領土への間接的な領有の根拠を示している。さらに、日本人の漁師や商人たちもアイヌたちと交易するために北方領土(更にその北方の島々まで)を頻繁に訪れていて、松前藩も1754年には北方領土に場所を開き数百人単位で役人たちが常駐するようになっていく。間接的な領有の根拠が、自国民の活動や移殖により更に強化されたことになる。その頃のロシアはやっと数百キロメートル離れた千島列島の最北端当たりを支配下に収めただけの状態だ。日本は上代から平安時代にかけて数百キロメートルにわたり関東・東北の蝦夷たちを南から北に順次支配下に置いて行き移民も行ったが、その頃のロシアもかつての征夷大将軍たちと同じ状況であり、数百キロメートルに及ぶ千島列島の最北端で原住民たちの反乱を鎮圧してやっと南方に向かい始めたばかりの状態だった。

ロシアの歴史認識は、現代史についても重要な部分をまったく無視している。たとえば、日本が独ソ戦の最中に如何に仁義を守りロシア側の味方をしたか、また、それにも関わらずロシアが日本に対して終戦前後に如何に酷いことをしたのかを理解していない。これらは、ソ連共産党時代に嘘で嘘を固めた滅茶苦茶な「ロシアの栄光の歴史」を国民に教育した結果であり、今でもロシア国民の多くが「日本には迷惑をかけられっぱなしだったが、ロシアが独力で正々堂々と日本をはねのけた」などというように第二次世界大戦を誤って認識している(以下参照)。

 https://qvahgle-gquagle.blog.so-net.ne.jp/2019-03-05-07
 https://qvahgle-gquagle.blog.so-net.ne.jp/2019-03-06-01

こういう滅茶苦茶な主張をする国と付き合う必要はないはずだ。しかし、新聞記事によれば、これだけ踏みつけられても日本はロシアと経済協力をしていくようである(以下参照)。

 https://digital.asahi.com/articles/ASM5B5DKZM5BUTFK014.html
 >一方、日本側が領土交渉への機運を高めると期待する北方四島での共同
 経済活動について「双方が柔軟性を発揮して、建設的に作業するよう事務
 方に指示を出すことで一致した」と成果を強調した。

極東地区の開発に協力しても、ロシア人たちが恩に着て北方領土に柔軟な態度を示すというようなことにはならず、経済力を背景として強硬な姿勢を日本に対して取るようになることは、既に以下で説明した。

 https://qvahgle-gquagle.blog.so-net.ne.jp/2019-03-27

こちらは一つも「果実」を得ていないのに「共同経済活動」などする必要がどこにあるのだろうか?ソ連やロシアは不法行為を行い日本に迷惑だけをかけている状態なのであるから、無条件にそういう不法行為をやめさせるだけの話だ。泥棒に盗品を返してもらうために、踏みつけられながら譲歩に次ぐ譲歩を行い盗まれた財産を次々に諦めて泥棒の物と認めるなどということは、究極のバカのみが行えることだ。ロシア政府と言うのは、米国や中国のようにこちらが何かやって上げたことに対して「恩」を感じ「お返し」をしてくれることはない。ロシア政府というのは、歴史的に考察した時、欲しければただ黙って盗ってしまう国であり、義理も恩義も何も通用しない国だ。だからこそ、東欧をはじめとした世界中の国々から嫌われたり用心されたりしている。それなのに、経済協力を行うなどというのでは、そのようなロシアの「特性」を全く忘れている愚行にしか思えない。ロシアからしてみれば「こちらが正当であり温情で元島民の墓参りなどを認めてやっているのだから、ロシア領千島に金を出せ」という程度の認識しか持っていないのは火を見るより明らかだ。

結局、今の日本の政権が「領土などどうでもよいから金を稼ぎたい。あるいは、領土などどうでもよいからレガシーを残したい」と考えて産業界などをプッシュしているということなのだろう。実際、外相会談の一ヵ月ほど前に、以下のような記事が載っていた。

https://www.sankei.com/economy/news/190416/ecn1904160041-n1.html
>…ロシアの独立系ガス大手ノバテクが、北極圏の液化天然ガス(LNG)事業への出資を三井物産と三菱商事に打診し、日本の官民が水面下で参画を模索している。北方領土の交渉を進めたい官邸は同事業参画を交渉のカードにしようと前のめりだが、民間は経済合理性の観点から慎重な姿勢を崩さず、足並みは乱れている。…

これについては、サハリン2の教訓を忘れたのかと言いたい。

サハリン2事件というのは、以下のような事件である。各種、説明したウェブページが存在する有名な事件なので、それらのURLだけを載せることにする。


 https://kotobank.jp/word/%E3%82%B5%E3%83%8F%E3%83%AA%E3%83%B32%E4%BA%8B%E4%BB%B6-181087

 http://blog.livedoor.jp/rekisiwatanabe/archives/24883778.html
 http://blog.livedoor.jp/rekisiwatanabe/archives/25017365.html

さて、このような指摘があると、ほとんど必ず「ロシアはそんな国ではない」と擁護する者たちが現れるのがロシア関係における常だ。実際、サハリン2事件についても、「ロシア企業のガスプロムが日英蘭の企業体から適正価格で株を買ったのだから日本側は文句を言えないはずだ」という旨のデマを飛ばす者たちが存在する。これは悪質なデマの類だ。

資源開発と言うのは、「失敗する可能性」を多分に含んでいるものであり、各企業は「失敗料」を確率的に払っていることになる。故に、サハリン2のように「採掘に成功した分」だけを負担すれば済む話ではないのだ。実際、住友商事は2014,15年頃にアメリカで「超有望」とされた地域のガス田の採掘権を買い取り採掘を始めようとしたが、地下の構造が事前予想とは違っていたために採掘を諦める結果となっている。そのため、住友商事は2000億円もの減損を計上し、その期は赤字決算となった。

 https://toyokeizai.net/articles/-/49340

資源開発というのは「有望」と言われる場所でも採掘に失敗することはかなりある。そういう大損失の可能性をはねのけて採掘に成功した企業に対して成功した部分にだけ「金を払った」と主張しても、そのような主張はまやかしでしかない。

さらに、サハリン2の時は、「日本企業が採掘するのだから、日本国内に向けてエネルギーを安定して供給できるはずだ」という最も肝心な目的も水泡に帰した。「日英蘭の企業が採掘と出荷を行うのならば地政学的なリスクに影響されずエネルギーの安定供給を行える」というのが当初の最大の目的であったはずだ。ところが、そこにロシアが半国営企業のガスプロム社を無理に割り込ませ株式の過半数を取らせてしまったために、何事も一々ガスプロムに承認を求めなければ日英蘭側で自由に採掘や販売などを行えなくなってしまった。これでは何のために投資したのか分からない。

このように指摘すると、またロシアフリークが現れて「ロシアはヨーロッパ向けのガス価格をいじったことがないのだからロシア発の地政学的リスクなどない」と言い張ることだろう。これも全くのデマでしかない。たとえば、ドイツがロシアのことを信じた結果、現在のドイツは一次エネルギーの40%をロシアから輸入するようになっているが、そのためにウクライナ問題においてはヨーロッパ諸国の中で最後までロシアの侵略行為に反対するガンとした態度を取れなかったと言われている。しかも、米国などに批判されてドイツ政界が反ロの方針を取ろうとするとドイツ産業界が安いロシアエネルギーを求めて大反対するというように、もう、ドイツではロシアに対してまともな政治的行動がとれなくなっている。日本のことをアメリカの属国呼ばわりする者たちがいるが、それならばドイツはもっと酷い「ロシアの属国状態」になっている。ロシアが戦略的に石油やガスを使っていることは、ウクライナに対する例を見ればもっとよくわかる。

 https://www.ua.emb-japan.go.jp/jpn/info_ua/overview/4economy.html
 >…2005年,ユーシチェンコ政権が成立すると,ロシアはウクライナ向け天然ガス供給価格をこれまでの3倍に値上げすると提案した。これをウクライナ側が拒否すると,ロシア側は逆に更なる大幅値上げを提案越し,年内の妥結に至らなかった。…

 https://nikkan-spa.jp/plus/1525104

ロシアは、ウクライナの他にも反ロ親米的な東欧諸国に対し、次々とエネルギー価格を釣り上げた。それに対し、ロシアフリークたちは紛争当初は「国際価格と同程度に引き上げただけだ」と主張した。このロシアフリークたちの狂ったまでの親ロ的主張は、突然、短期間のうちに生活必需物資を何倍にも値上げしたという行為自体がすでに「戦争に準じる行為」であることを忘れている。基本的エネルギーを途絶させる政策は「戦争行為」と認められていて、日米開戦の直接の原因にもなった重大行為だ。しかも、その後もロシアはガスや石油の価格をつり上げ続けて元値の数倍以上にし、国際価格さえをも超えた価格を要求したために、今ではウクライナはロシアからのガス購入を削減して東欧を中心とした欧州からのガス購入に切り替えようとしている(ほぼ切り替え終えたと言えるだろうか)。

ロシアエネルギーが安いからといって安易にそれに切り替えれば、その先には苦悩の道が待っていることを日本の政権担当者たちは忘れているようだ。

しかも、現在のロシア開発に関係した話に関しては、対ロ経済制裁を主導している米国の目が常に光っていることも忘れてはならない。イラン原油と同じようにいつ規制されるかわからないのだ。ウクライナに対するロシアの暴虐な態度とアメリカの規制強化を懸念したために、上述のヤマルガス田開発からロイヤルダッチシェルは手を引いている(さらに加えて、サハリン2の問題もあったのだろう)。そういう事情が存在する上に利益が出るかどうかについても確信できない面があるので、日本の企業もヤマルでのガス田開発・運営には及び腰の状態だ。それに対して、政府が「やれ」と圧力をかけているのだ。これは、一部政権担当者たちが日本国民全体の思いを無視した上で、私企業にも「日本売り」としかならないことを強要しているだけだ。きちんと言うことも言わずに相手の言うがままに次々としなくてよい譲歩と交渉を続けているこの政権は、レガシー作りしか頭にないのだろう。

ロシア政府と交渉するときは、現物を手に握った上でそれぞれが手渡しで交換するのでなければ、先に物を渡すと「取られ損」になることが必定であることを改めて注意喚起しておこう。


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